ITIL（IT Infrastructure Library）関連の調査メモ

ITIL (IT Infrastructure Library) とは

• ITサービス マネジメントのベスト プラクティスをまとめたフレームワーク[1][4]
• 事業者と顧客の双方の観点からITサービスの品質の継続的な測定と改善[1][4]
• ITサービス運用分野のデファクト スタンダードとなりつつある[1][5]
• ITIL → イギリス規格 BS 15000 → ISO/IEC 20000という経路をたどって事実上の国際標準になっている[5]
• 類似領域の重要な標準にISO/IEC 12207 (JIS X 0160) / 共通フレーム（SLCP-JCF）がある．

歴史[2]

ITIL V3

• ITIL V3 はコア出版物5冊が各 lifecycle modules になっている[3][1]．V3のコア出版物5冊は下表を参照．
• 各巻21時間の自習を推奨とのこと[3]．［備考　5冊で約2000ページ，299 GBP（約48,000円），※2011-07-29版[16]．］

ITIL V3

• 4. Service Strategy
  • Key Concepts（ITサービス戦略の4つのP）
    • 将来展望（perspective） 明確なビジョンと方針．
    • 立ち位置（position） サービス提供者の競争の源泉になる土台．
    • 計画（plan） ビジョンをどのように達成するための具体的な手順．
    • パターン（pattern） 基本的な手順・手法．何かを決定する場合および実施する際に繰り返し使われる明確なパターン．
  • Key Processes and Activities
    • お金の管理（Financial Management）
    • Service Portfolio Management (SPM)
    • Demand Management
      顧客の期待の管理．顧客の期待の管理がずさんだと，不明瞭な要望がとりこまれることになり，サービス提供者側のリスクの温床になる．行過ぎた要求は価値の創出を生みださないコスト増につながる．［このようにITサービスを提供する側の視点での事業の継続性も議論する点がITILのひとつの特徴といえそう．］
    • Service Level Package (SLP)
      サービス提供者が保持・管理しているITサービスをまとめたリストのこと．｛計画・準備中，稼動中・提供中，廃棄・提供中止｝の状況ものせてある．サービス プロバイダーが保有する各サービスに対して，｛投下された投資の量，運用・保守コスト，利益，リスク｝を一覧にして比較可能にする．また，稼働中のものだけでなく，投資やリソースが見込まれる企画段階や構築中のサービスも含まれる．計画→構築→稼動→廃棄の流れをサービス パイプラインと呼ぶ[17]．
      Service Level Package (SLP) に対して，外部に提供しているサービスの集合を“サービス カタログ”と呼ぶ．サービス カタログはサービス ポートフォリオの部分集合になるが，用途がことなっている．
• 5. Service Design
  • 5つの視座
    • 新規・更改サービス ソリューション
    • サービス管理システムとツール，特にサービス ポートフォリオ
    • 技術的なアーキテクチャと管理システム
    • プロセス，役割，可用性
    • 測定方法とメトリクス
  • 機能・品質の一貫性や統一性を確保するため，IT活動・プロセス全体を視野においてアプローチすべきである．Designの4つのPを使うとよい．
    • people ITサービス提供における，人，人的スキル，競争力．
    • products ITサービスを実現するための技術と管理システム．
    • processes プロセス，役割（roles），活動（activities）．
    • partners 提供するITサービスが利用する製品のベンダーなど．
  • Key Process and Activities
    • Service Catalogue Management (SCM)
    • Service Level Management (SLM)
      • Service Level Agreement (SLA)
      • Operational Level Agreement (OLA)
      • other support agreements
      • production of the Service Improvement Plan (SIP) and the Service Quality Plan
    • Capacity Management
    • Availability Management
    • IT Service Continuity Management (ITSCM)
    • Information Security Management (ISM)
    • Supplier Management
• 6. Service Transition
  • Service Transition とは
    • ビジネスに必要なサービスを提供すること．
    • 稼働中のサービスに必要なすべての要素・支援を提供する．［ここでいう稼働中のサービスとは人間系でやっているものも含む．］
    • 平常運用時以外の場面も想定する．
    • 事前に想定できない異常時にもサービス（≠プログラム）が継続できることを求めている．［ITILのいうサービスはコンピュータープログラムの意味ではなく，人間系も含めたサービス．なので，コンピューターシステムがトラブルに見舞われて動作しないときに一時的に紙帳票で人間系で処理→復旧後にシステムにデータ登録して平常にもどすなどの計画・設計も含んでいる．システムをつくる側としては災害などによる甚大被害等に備えると同時に，人間系での処理が必要になったときに，あとでデータを整合性を保ちながらもどせるかなども考慮ポイントになる．］
  • Key Processes and Activities
    • Change Management
      • ユーザー資産の変更管理は当然ユーザー側でケアするとして…　システムの基盤部分の変更管理は当然システム基盤提供者（partners）の責任で解決することになる．単純にソフトウェア製品の変更管理だけでなく，どのサーバーにどの修正パッチが適用されいているかなど，具体的なインスタンスを特定した変更管理が必要になる．
      • 変更は｛記録，評価，承認，優先順位付け，計画，テスト，実装，文書化，レビュー｝されなければならないと規定されている．例えば，システム基盤にインストールされているJDBCドライバの更新適用要否の判定などを誰がいつ誰に承認してもらうのかなども事前に決めておかなければならない．
    • Service Asset and Configuration Management (SACM)
      システム内にどんなサーバーが何台あって，それぞれ設定はどうでアプリケーションは何がのってて…とか，意外と文書化されてなかったりとか あるあるですもんね．本来はお客様が自力で文書化するものと思うのだけど，デプロイ管理サーバーをいれれば，ある程度は自動化できて，うれしいかもしれない．
    • Knowledge Management
    • Transition Planning and Support
    • Release and Deployment Management
    • Service Validation and Testing
    • Evaluation
• 7. Service Operation
• 8. Continual Service Improvement

参考：ITIL V2 についての補足

ITIL V2 は7部の文書で構成されているが，下記の2つを中心にサービスを設計することが多い[21]．V3になって考慮すべき領域が大幅に広がっているが，システム設計者側から見た場合，この2項目がサービス設計の核をなしている点は現在も変化しておらず，まずはこの2項目を抑えるのがよいと考えられる．

• サービス デリバリー
  • サービス レベル管理
  • ITサービス財務管理
  • キャパシティー管理
  • ITサービス継続性管理
  • 可用性管理
• サービス サポート
  • サービス デスク
  • インシデント管理
  • 問題管理
  • 構成管理
  • 変更管理
  • リリース管理

JIS Q 20000 (ISO/IEC 20000)

• JIS Q 20000-1:2012
  • サービス提供者がサービス マネージメント システム（SMS）を，｛計画，確立，導入，運用，監視，レビュー，維持，改善｝する総合的なアプローチを規定する．
  • PDCAサイクルをまわすことを要求．
  • 下記4～9のすべてが満たされていないと規格準拠とはいえないと規定されている．
  • 3までは Preface とか Terminology とか．4からが本文．
  • ガバナンスに対するエビデンスが必要と規定している．
• JIS Q 20000-2:2007
  JIS Q 20000-1で規定するサービス マネジメント プロセスのベスト プラクティスを規定する．［ベスト プラクティスって規格で定義するようなものだっけ？て疑問はとりあえずおいておいて…］ざっと読んだところ，20000-1の補足のような感じになっているため，ベースは20000-1でつくって有益な事例を併記する形で紹介すればよさそう．

以下は，JIS Q 20000-1:2012 の第4章以降をベースに解説する．

• 4. 一般要求事項
  • 4.1. 経営者の責任
    • 4.1.1. 経営者のコミットメント
    • 4.1.2. サービスマネジメント方針
    • 4.1.3. 権限，責任およびコミュニケーション
    • 4.1.4. 管理責任者
  • 4.2. 他の関係者が運用するプロセスのガバナンス
    内部のグループ，顧客，何らかのサプライヤーなど，自身の組織が直接統括する以外のプロセスのガバナンスについて規定することを求めている．たとえば，自分がアプリケーション サーバのレンタルサービスをやってる場合に，DBを他部署から借りている場合，この他部署も管理することを要求している．
  • 4.3. 文書の運用管理
    • 4.3.1. 文書作成およびメンテナンス
      以下の文書が必要と規定している．
      (a)Service Management の方針・目的，(b)Service Management 計画，(c)SMS各プロセスの方針・計画，(d)サービスカタログ，(e)SLA，(f)Service Management プロセス，(g)規格が要求する手順と記録，(h)SMS上 必要になる その他の付随文書（他部署が担当するプロセスも含む）．
    • 4.3.2. 文書管理
    • 4.3.3. 記録の管理
  • 4.4. 資源の運用管理
    • 4.4.1. 資源の提供
      下記2項に必要な，人・技術・情報・財務資源を決定し提供する．
      - SMSおよびサービスの確立・実施・維持とその有効性の継続的改善
      - サービス要求事項を満たすことによる顧客満足の向上
    • 4.4.2. 人的資源
      要員に必要な技能の定義，人員の育成など．
  • 4.5. SMSの確立および改善
• 5. 新規サービスおよびサービス変更の設計・移行
• 6. サービス提供プロセス
  • 6.1. サービスレベル管理
  • 6.2. サービスの報告
  • 6.3. サービス継続および可用性管理
  • 6.4. サービスの予算・会計業務
  • 6.5. 容量・能力管理
  • 6.6. 情報セキュリティー管理
• 7. 関係プロセス
  • 7.1. 事業関係管理
    • 顧客，利用者，利害関係者を特定し，文書化することを求めている．
    • 各顧客について，顧客関係および顧客満足を管理する責任者を指名することを求めている．
    • 定期的なレビューが必要。おそらくSLAの問い合わせ件数から苦情件数を特定して測定するような方法でもよさそう．
  • 7.2. 供給者管理（サプライチェーンの明確化）
• 8. 解決プロセス
  • 8.1. インシデントおよびサービス要求管理
  • 8.2. 問題管理
    • 予防措置をやる・やらない・やるとしたらどうやるなどを管理するために，インシデントや問題の分析（統計的な分析を含む）を求めている．
    • 既知不良の管理．
• 9. 統合的制御プロセス
  • 9.1. 構成管理
  • 9.2. 変更管理
    • 変更の事前検証もしなければならないと規定しており，開発・検証・本番の3ステージにわけているのはこれを実現するため．
  • 9.3. リリース・展開管理 リリース頻度・種類　JDBCドライバの更新規則とかがこれにあたる．

Terminology

Links

参考：国内SIerの取り組み状況（※教育・トレーニング プログラムは除く）