Labelflash(レーベルフラッシュ)

記録型DVDドライブ(以下“DVDライター”)のレーザー光でDVDのレーベル面に絵を描いてしまおうという技術.

しくみ

原理はとてもシンプル.

CD-RやDVD-Rなどの記録型ディスクにデータを書き込むと, データを書き込んだ領域と書き込んでいない未使用の領域の色が少し違っていることに気がつく. これは,CD-Rなどの記録型ディスクのデータ記録面が熱で融解して変色する特殊な色素でできていて, ライターはこの色素にレーザー光をあてて加熱して変色させることで反射率を変えてデータを記録しているためだ. CD-Rにデータを焼きこむことによって描かれる模様は単純な輪でしかないが, レーザー光をあてる位置を精密にコントロールすれば,自由な絵を描けることになる.

データ面に絵を描いても意味がない(面白いかもしれないけどデータを記録する媒体としての意味がない)ので, ディスク側にひと工夫しておく. DVDのピックアップはディスク面から0.6mmのところに焦点が合うようになっている. したがって,データ面だけでなく, レーベル面側の深さ0.6mmのところにも同様にレーザー光を照射することで色が変化する色素を仕込んでおき, レーベル面に絵を描くときにはディスクを裏返してDVDライターにいれるようにする.

あとは専用の制御ソフトウェアを使って,画像をレーベル面上に再現するようにレーザー光を照射するかしないかを コントロールすればよい.

Labelflash対応ドライブが必要?

DVDライター自体は普通のライターでOK…のはず(原理的にはOKのはず)なんだけど, 実際に売られているドライブを見ると,“Labelflash対応ドライブ”となっていて, 普通のドライブとは違うような感じ. もしかしたら,ドライブ自体はノーマルのDVDライターでOKでも,制御チップとかに何かしら工夫が必要なのかも. あるいは,Labelflashメディアは通常のDVD-Rメディアなどより少し厚みがあるので, ドライブとの相性問題がでるのかもしれない. いずれにしても今のところ,どのDVDライターでもOKとはいっていないようだ.

その他,以下のような特徴がある.

ヤマハと富士写真フイルムが開発

Labelflash技術は,ヤマハと富士写真フイルムが開発. ヤマハがドライブ技術,富士写真フイルムがディスクに使う有機色素の技術を担当したようだ. 2006年07月現在,I-O DATAなど いくつかのベンダーがパソコン用にLabelflash技術つきのドライブを売り出している. 民生機のDVDレコーダにLabelflash技術を採用したものは,まだないと思われる.

対抗技術 lightScribe

Labelflashと よく似た技術に,lightScribeがある. こちらはアメリカHP(ヒューレット パッカード)社が中心になって開発したもので,公式のWebページを見ても主に欧米で先行しているようだ. 2005年3月ごろからドライブおよびメディアの発売が開始されたようだが,店頭での存在感はいまいちといったところ. メディアは主に三菱化学がメディアを供給しているようで,2006年8月ごろにはソフマップなどで ときどきワゴンセールが行われているのを見るようになった.

日本ではI-O DATAなどが有力な日本メーカーがドライブを供給するLabelflashの方が目立っているように見えるけど, 世界的にはlightScribeの方が優勢かも. lightScribeのドライブ供給は台湾のBenQや韓国LG電子,オランダのフィリップスなど,国外メーカーなので日本での露出は弱めかも.

2005年 世界のパソコン出荷
順位メーカー シェア出荷台数(百万台)
1DELL 16.8%36.7
2HP 14.5%31.7
3Lenovo/IBM 6.9%15.1
4Acer 4.6%10.1
5Fujitsu/Fujitsu Siemens 3.8%8.3
その他 53.4%116.7
合計 100.0% 218.5

lightScribe最新動向(2006-12-18追記)

ヒューレット パッカード(HP)社製のPCでは,オプションとしてlightScribeドライブが選択できる. HPは世界のパソコン市場シェア2位,年間3100万台以上のパソコンを出荷する巨大ベンダーなので, HP製パソコンを購入する際にオプションとしてlightScribeドライブを選択できる点はlightScribeの普及には大きなプラス要素になると考えられる.

また,デスクトップPCだけでなく,ノートPCでも選択できる点も注目で, 出先での手軽なレーベル印刷手段として,単なるプリンタによるレーベル印刷の代替以上の意味を持つ可能性もある.

標準の48倍速CD-RW/DVD-ROMコンボドライブからlightScribe対応16倍速DVD±RW(いずれもSerial ATA接続)に変更する価格はデスクトップ機で3000円とリーズナブル. アメリカでの標準→lightScribe対応ドライブの変更にかかる料金は25ドル=1ドル117円換算で2952円とのことなので日米とも同じ価格設定と思ってよさそう. [注:2006-12-19時点では800ドルを超えるハイエンドのデスクトップはlightScribe対応ドライブを標準搭載, 500ドル以下の廉価機ではオプティカルドライブが無料キャンペーン中のためか少し高めになっていて+40〜50ドル程度. ノートPCでも同様で廉価機以外はlightScribe対応ドライブが標準.] [2008年10月ごろに会社が新しいマシンを配布してくれたのだけど,そのマシンがHP製でlightScribe対応ドライブを搭載している. 使われているかどうかは別として,lightScribe対応ドライブ搭載マシンは着実に増加しているのかも.]

HP m7690eの構成詳細画面.ハイエンド機 約850ドル=1ドル117円換算で約10万円だと標準装備.

ヨドバシカメラのWebページで調べると, LabelflashとlightScribe対応ドライブの商品登録状況は次のようになっている(2006-12-19夜). やはり日本ではLabelflashの方が商品は多いようだ. lightScribeはメインベンダーのHPが基本的にドライブの外販をやるような企業ではないので,ドライブ単体販売で比較されるとつらいかも. また,HPの日本でのパソコン販売は7位,シェア5.7%,わずか71万台しかなく,世界市場の状況とは一致しにくい事情がある(日本ではよくある現象). ただ,Labelflashも一般の人はまったく知らないレベルの普及率にとどまっているので, 将来的には世界的なシェアを背景にもつHP/lightScribeがジワジワ押し上げてくる可能性は高いかもしれない(これも日本市場ではよくある現象).

Labelflash/lightScribe対応ドライブの販売状況(ヨドバシカメラ
対応規格 登録機種数 内臓ドライブ価格 外付ドライブ価格 備考
LabelFlash 16機種 6,980〜7,980 10,800〜19,800 I-O DATA 7機種,バッファロー 5機種,ロジテック 4機種(旧型含む).
lightScribe 4機種 6,480 12,980〜16,980 バッファロー 1機種,ラシージャパン 3機種(旧型含む).

[この情報は,Sohmaさんからの情報提供を受けて再調査・追記しました. 現在アメリカ留学中のSohmaさんの周りではlightScribeのロゴが入ったHP製ノートPCを使っている方がけっこうおられるそうです. 実際,米HPのダイレクト販売Webページで調べると,廉価機をのぞいてlightScribe対応ドライブが標準搭載になっています. Sohmaさん,ありがとうございました.]

lightScribe/LabelFlash市場調査(2006-12-26追記)

両規格の技術動向・マーケティング動向は以上で説明したとおりだが, (何らかの理由でいずれかの規格に対応したドライブをもっていたとして) 肝心のレーベル印字機能がどの程度利用されているかも重要なポイントだろう. そこで,量販店の店頭でのlightScribe/LabelFlash対応メディアの在庫状況を調査した. 調査は,2006-12-22 17:00頃,ヨドバシカメラ秋葉原店2Fにて行った.

メディア在庫状況

lightScribe/LabelFlashメディア在庫状況(2006-12-22 ヨドバシ秋葉原)
種別メーカーディスク種類価格在庫数備考
lightScribe 三菱化学 CD-R 700MB 48x 980円/5枚 4箱(20枚) Ver. 1.2
DVD+R 4.7GB 1-16x 1,480円/5枚 7箱(35枚) Ver. 1.2
DVD+R 4.7GB 1-16x 1,480円/5枚 4箱(20枚) 無印
LabelFlash FUJIFILM DVD-R 4.7GB 1-16x 290円/1枚 8枚

LightScribeメディアの在庫は三菱化学製のもの1ブランドのみ. LabelFlashメディアの在庫もFUJIFILM製の1ブランドのみ. 在庫状況はどちらもさみしいもので,LightScribeはいずれも5個パックで他の選択肢なし,FUJIFILMは1枚ずつの販売のみで,在庫もたった8枚しかなかった. メディアの在庫状況を見る限り,いずれも普及には程遠いといってよさそう. 特にLabelFlashは在庫している枚数から考えても現実にLabelFlashの機能を利用しているユーザーはほとんどいないといってよさそう (LabelFlash対応ドライブをもっている人でもレーベル印字機能は利用していないと思われる).

ドライブの売り場には,Labelflashしか印刷例の展示がなかったが,メディアの売り場にはLightScribeの印刷サンプルの展示もあった. LightScribeは金地に黒の繊細な線画でコントラストが強くなかなかいい感じ. Labelflashは青地に少し色の違う青の線画でコントラストは弱い感じ. どちらがよいかは使う人の好みによるだろうけど,ハッキリきれいに見えるという意味ではLightScribeが上のようだ.

LightScribeにはVer. 1.2対応のものと,そうでないもの=無印(ver 1.0かな?)があるようだ. メディアはすべて三菱化学製のものだが,よく似たパッケージでVer. 1.2対応と書いてあるものとそうでないものがある.

ドライブ在庫状況

ドライブの在庫はLabelflashのみ. LightScribeのドライブは単体売りはしていないようだ.

LabelFlash対応ドライブ在庫状況(2006-12-22 ヨドバシ秋葉原)
ベンダー在庫機種数ドライブ
I-O DATA 2機種 ソニーNECオプティアーク製 AD-7173A
BUFFALO 1機種 パイオニア製 DVR-111L

参考リンク


はたいたかし
2006-12-26 改訂2 lightScribe/LabelFlash対応メディアについての市場調査結果を追加.
2006-09-25 改訂1 対抗技術であるlightScribeについての記述を追加.
2006-07-15 初稿
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